代表的な症状

ひきこもり

ひきこもりとは、一般的には様々な要因が重なって社会的な参加(就学や就労など)の機会が失われている状態をいいます。
何らかの理由(心理的要因、身体的要因、社会的要因など)が絡み合うことで、周囲の環境になじめなくなったときに「ひきこもり」という状態になります。
しかし、一口にひきこもりといっても、自宅付近(例えば近くのコンビニでの買い物)であれば外出できる人、あるいはずっと家の中に閉じこもっている人など「ひきこもり」の状態は人それぞれです。
また、何らかの精神的な病気や発達の障害が影響してひきこもりになるケースもあります。

ひきこもりにみられる主な状態

・昼夜逆転の生活を送る
・無性にイライラする。暴力をふるう
・同じことを何度も繰り返す

ひきこもりの背景には、以下のような精神障害が存在しています。
・統合失調症
・うつ病
・適応障害
・不安障害
・広汎性発達障害
 など

統合失調症

主な症状

・幻覚
・妄想

統合失調症は「前兆期」「急性期」「回復期」「安定・慢性期」があり、幻覚や妄想以外の様々な症状を発症する病気です。
前兆期
幻覚・妄想などの代表的な症状が発症する前に、不眠・不安・神経過敏などの症状が現れます。

急性期

急性期では「陽性症状」「陰性症状」があり、以下の通りの症状が現れます。
・陽性症状:幻覚、妄想、精神運動興奮、混迷など
・陰性症状:抑うつ、無気力、ひきこもり、倦怠感、感情の起伏が乏しいなど

回復期

回復期では一般的に幻覚・妄想などの陽性症状が次第に減少し、陰性症状が残ります。

安定期または慢性期

安定期、慢性期では治療によって安定した生活を送れるようになる方が多いですが、陰性症状が残る場合もあります。

統合失調症の治療法

統合失調症の治療では、薬を使った治療(薬物療法)と、専門家のカウンセリング受けたり、リハビリを行う治療(心理社会療法)を組み合わせて行います。

うつ病

主な症状

・表情が暗い
・自分を責めてばかりいる
・涙もろい
・落ち着かない
・飲酒量が増える
・食欲がない
・眠れない、または過度に寝てしまう

うつ病は気分障害の一つで、1日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神状態とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな影響が出ている場合、うつ病の可能性があります。
気分障害には、うつ病のほかに双極性障害(躁うつ病)などがあり、うつ病とは治療方法が異なるため、専門家による診察・判断が必要になります。

うつ病の治療法
うつ病の治療法を受ける前に、まずは心身の休養をしっかりと取りましょう。環境を整えること(職場や学校から離れる、場合によっては入院環境に身をゆだねる)により、大きく症状が軽減される場合もあります。また、うつ病の治療には、薬による治療(薬物療法)と、専門家とのカウンセリングを受ける治療(精神療法)があります。
散歩などの軽い有酸素運動を行うことで、うつ症状を軽減することもあります(運動療法)

適応障害

主な症状

・不安
・抑うつ
・無気力
・悲壮感
・全身の倦怠感
・涙がとまらない
・動悸

適応障害は自分の置かれた環境に慣れることが出来ず、不安感や抑うつ気分、不登校、出勤拒否、対人トラブルなど、様々な症状・問題が出現し日常生活に大きな影響を及ぼす状態です。
様々な要因で発症しますが、特に就学や就職、転職、結婚、離婚など生活環境に大きな変化があった際に発症しやすいと言われています。本人が「新たな環境に慣れなければ」と思っても、思い通りに事が運ばない時にストレスと感じ、発症の原因となります。

適応障害の治療法
まずは発症の原因を解決する事を目指しましょう。原因を取り除くことができたら、環境をととのえて休養を取ることで症状が軽減される場合もあります。現実的にストレスを取り除くことが難しい場合は、一時的に原因から距離を取るなどして、受けるストレスを減らすことに努めましょう。
適応障害の治療でも薬を使用する場合もあります。例えば不安や不眠の改善には睡眠薬や睡眠導入剤、うつ状態の改善には抗うつ薬を使用することもあります。しかし、適応障害の場合は薬物療法では根本的な解決にはならいことが多く、必要性に応じて慎重に判断して治療を行います。

不安障害

主な症状

・動悸、息切れ
・汗がでる
・体が震える
・吐き気
・めまい、ふらつき
・現実ではない感じ、自分が自分でない感じ
・自分がコントロールできない など

大勢の人の前で話す、大事な試験など、緊張して汗をかいたり、心拍数が上がることは当たり前の反応です。ただ、心配や不安が過度になりすぎて、日常生活に大きな影響が出るようになると、不安障害の可能性があります。不安障害は精神的な不安から「こころ」と「からだ」に様々な影響が出る病気です。
不安障害は様々な病気の総称となります。

パニック障害

上記に挙げた「主な症状」がパニック障害の症状になります。
上記のような症状や反応は「パニック発作」とよばれ、パニック発作が繰り返される病気を「パニック障害」といいます。

社会不安障害(社会恐怖)

人に注目されることや、人前で恥ずかしい思いをすることが怖くなり、人と話すことだけでなく、人が多くいる場所(電車やバス、繁華街など)に、強い苦痛を感じる病気です。怖さのあまりパニック発作を起こすこともあります。

強迫性障害

つまらないことだとわかっていてもある行為をやめられず、くりかえし同じことをしていないと不安でたまらなくなります。例えば「くりかえし手を洗い続ける」「火の元や戸締りを何度も確認する」といったものがありますが、過度に繰り返し、学校や日常生活に大きな影響が出た場合は強迫性障害の可能性があります。

全般性不安障害

全般性不安障害は、学校や仕事での活動や、健康などについて過度な不安や心配が半年以上続いていることが特徴です。不安に加えて、落ち着かない、緊張、発汗、手の震えなどを伴う場合もあります。

不安障害の治療法
不安障害の治療は、薬物療法とカウンセリングが中心になります。薬抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが使われます。また認知行動療法といわれるカウンセリングでは、こころと体をリラックスさせる、苦手なモノや場所に少しずつ慣れさせていく、極端な考え方のクセを見直すといったことを行います。このような治療を通してストレスの軽減を図り、不安や恐怖に対処できるようなサポートを受けながら、苦手なことに段階的にチャレンジして、自信を取り戻すことが回復につながります。

アルコール依存症

主な症状

・常時お酒を飲みたいと強く思う
・飲み始めると歯止めが利かなくなる
・常時手元にお酒がないと落ち着かない
・数時間ごとに飲酒をしてしまう(連続飲酒)
・酔いがさめると、手の震え、発汗、不安感、イライラ感、うつ状態などが発症する(離脱症状)
・上記の症状を抑えるために飲酒をしてしまう

大量のお酒を長期にわたって飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態がアルコール依存症です。その影響が精神面にも身体面にも表れ、仕事ができなくなるなど日常生活に大きな影響が出てしまいます。またアルコールが抜けると、イライラや神経過敏、不眠、頭痛・吐き気、下痢、手の震え、発汗、頻脈・動悸などの離脱症状(禁断症状)が出てくるので、それを抑えるために、また飲んでしまうといったことが起こります。

アルコール依存症の治療法
アルコール依存症の治療は外来でも可能ですが、治療の主体は入院治療です。

解毒治療
こころとからだに起きている合併症の治療と離脱症状(禁断症状)の治療。

リハビリ治療
個人精神療法や集団精神療法で、本人に飲酒問題の現実を認識してもらい、断酒の決断へ導きます。退院後はリハビリ治療を行うにあたり、自助グループへの参加なども促す。また、本人や家族に十分な説明をしたうえで抗酒薬などの薬物療法も行う場合もあります。

産後うつ

主な症状

・抑うつ
・自分を責めてばかりいる
・疲れやすい
・食欲の減退や増加、またはこれに伴う体重の変化
・イライラする
・家事や育児の気力減退
・眠れない、または過度に寝てしまう など

「マタニティーブルー」という言葉をよく耳にしたことがあるかと思います。
マタニティーブルーも、産後うつの一種(軽度)で、産後3日以内に悲しい気持ちがあふれてきたりと、気持ちが落ち込んでしまう症状が、多くのママさんに現れる現象になります。
ほとんどの場合は一過性のもので2週間程度で治まるケースがありますが、2週間以上から数カ月続き、かつ日常生活に大きな影響を及ぼす場合は、産後うつ(重度)が疑われます。
産後うつは約10~15%のママさんに発症するといわています。症状を放っておくとさらに重症化して「産後精神病」へと進行してしまうケースもありますので、早めに専門家への受診を行ってください。

産後うつの治療法
産後、悲しい気持ちに陥る程度の軽度の産後うつであれば、家族や友人の支えによって、治療が必要になるということはありません。ただ、産後うつと診断された場合は、専門機関での治療が必要になります。
産後うつの治療では、カウンセリング、抗うつ薬などの薬物療法が主に行われます。
カウンセリングでは、ストレスに対しての適応や、否定的な考え方について「見方」を変えるなどして、マイナス思考から抜け出していく心理療法を行います。
薬物療法では、抗うつ薬が使用されるケースが多いですが、授乳中では薬物療法に対して抵抗感を感じる方がいます。ただ、早期に産後うつを抜け出すためには、薬物療法が必要な場合もありますので、主治医と相談するとよいでしょう。

お子様の発達障害

発達障害は生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動や情緒に特徴が現れる状態をいいます。そのため親(養育者)が育児の悩みを抱えたり、子供が生きづらさを感じたりすることがあります。

なお、発達障害には様々な種類があります。

・自閉症スペクトラム症

 コミュニケーションの面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相手とやり取りを行う、自分の気持ちを伝える、相手の気持ちを読み取るといったことが苦手です。また、特定の事柄に対して、強い関心を持ったり、こだわりが強いなどの特徴があります。

・注意欠如・多動症(ADHD)

 年齢に比べて、落ち着きがない、待てない(多動性・衝動性)、注意が持続しない、作業にミスが多い(不注意)などの特徴があります。

・学習障害(LD)

 全般的な知的発達では問題がないものの、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が見られる状態をいいます。

・チック症

チックとは本人の意思とは別に、不規則で突発的な身体の動作や発声を言います。瞬きや咳払いなどのチックが一時的に発生することはありますが、1年以上続く場合はチック症の疑いがあります。

・吃音

滑らかに話すことができない状態が吃音です。音(発音)を繰り返したり、音(発音)が伸びたり、なかなか言葉が出ないといった様々な症状があります。

発達障害があっても、子供本人や家族、周囲の人たちが特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫することで、持っている能力を活かしたり、日常生活での困難を軽減させることができます。

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